アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅
アンビエント・ファインダビリティ ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅


本書『アンビエント・ファインダビリティ』は、「情報設計の入門の入門」です。UI(ユーザーインターフェース)の重要性は近年叫ばれていますが、IA(Infomation Architecture 情報設計)はデザイナーレベルでは軽視されている印象を受けます。

しかし、「ボタンを押しやすい形にする」の前にまず、「どのページヘのリンクをボタン化するのか」という「情報設計」が必要になるのです。さらに、Yahoo! Japanのような巨大なポータルサイトであれば、サービスごとの階層構造の整理等、複雑で厄介な「情報設計」が必要になります。


本書では、(主にWeb上の)「探索」という行動を軸に、様々な考察を繰り広げていきます。情報を探しやすくしておくことに、どんなメリットがあるのか? 逆に、情報を探しにくいことのデメリットとは? といった出発点から、「どのような情報が探しやすく、どのような情報が探しにくいのか」といった点まで掘り下げていきます。

著者が述べる情報設計の大原則。それは、

「見つけられないものは、無いのと同じ」

さらに、「利用しにくいものは、利用できないのと同じ」。情報の質でWebを凌駕する図書館が、Webほどに利用されないのは、Webに比べて図書館が利用しにくいからだ、と著者は述べます。

優れたものを多くの人に使ってほしいなら、優れたものを作るだけでは、足りない。見つけてもらう工夫をしなければ、存在しないのと同じになってしまう。


本書は、技術書というよりは思想書。より正確にいうなら、技術をテーマとした思想書です。技術書ではないので、「読んですぐ役に立つ」という本ではありま せん。ただ、本書で扱っているテーマについての問題意識は身につきますから、長期的に見て、情報設計に気を使うようになる等の「お役立ち」はあるでしょう。