基礎からのMySQL 改訂版 (プログラマの種シリーズ SE必修! )
基礎からのMySQL 改訂版

500ページ以上ある本ですが、解説が丁寧なのでスムーズに進みました。以下、感想。


MySQLを学ぶうえで最初のハードルとなるのが環境構築です。本書は、WindowsにXAMPP(Apache, PHP, MySQL等がまとめられたソフトウェア)を入れ、文字コードはShift-JIS、という、読者の大多数を占めるであろうWindowsユーザーにとってフレンドリーな環境を作る方針になっています。Macユーザー向けにもMAMPの導入方法が載っています。

が、この点、私は不満です。というのも、MySQLを仕事で使う場合、そのOSはLinuxである可能性が高いからです。そして、WindowsとUnix(Linux、Mac等)では、MySQLの挙動が一部異なります。例えばテーブル名。Windows版MySQLでは大文字と小文字を区別しませんが、Unix版は区別します。「tbUser」と「tbuser」は、Windows版では同じテーブルですが、Unix版では別物です。その他のWindows版とUnix版の相違については、MySQLリファレンスが参考になります。


本書のメインである、データベース言語SQLの解説については、さすがに丁寧で充実しています。本書をやれば、基本的なCRUD文(データベースの作成、データの呼び出し、データの書き込み、データの消去)が書けるようになります。プログラマーにとって必要最低限のSQLは身につきます。また、ビュー、トランザクション、ストアドプロシージャとストアドファンクションについてもさわりだけは学べます。その先、MySQLのチューニングや、高度で複雑なSQLは、本書の守備範囲を超えます。


MySQLとセットで用いられることの多いプログラミング言語PHPについては、MySQLとの組み合わせで必要な最低限の範囲を絞って書いてあります。変数と配列、条件分岐と繰り返しといった、プログラミングの基礎に、MySQLを利用するための関数を加えた内容ですね。

WebページでのMySQL利用で問題となるSQLインジェクション対策等、セキュリティについても触れられています。自分の作ったサイトの脆弱性を自分で攻撃する、という流れが面白かったです。


HTMLに関しては、酷いの一言。本書に載っているHTMLは、10年前のそれです。XHTMLを経た現代のマークアップは、本書とは全く異なった書き方をします。まあ、タグの大文字はHTML5の仕様上はOKだし、<html><head><body>などはHTML5では省略可能とされています。ただし<FONT>、テメーはダメだ。

<FONT>タグのような、スタイル指定のための要素は、HTML5では廃止されています。<B><U><I>も同様です。ブラウザーは下方互換性を保つように作られているので、<FONT>タグを使っても当面問題となることはないでしょう。しかし、スタイル指定のための要素を使うと、HTMLを書くのにも煩雑ですし、後々のメンテナンスが大変になります。Webページのデザインの調整を行いたいなら、CSSを学ぶべきです。HTML/XHTMLスタイルシートレッスンブックのような良書があります。


後半がイケてなかったので、読後感は良くありませんが、前半のSQLの解説は丁寧です。オススメというほどではありませんが、SQLの部分だけでも元は取れるはず。あなたがMySQL初心者なら、買って損はしないでしょう。

ただ、Windows上での環境構築にせよ、HTMLタグの解説にせよ、初心者に理解しやすい内容(裏を返せば、解説の容易な内容)を選択した結果、実務の観点からするとツッコミどころがある、という点には留意すべきかと。