実践 Vagrant
Mitchell Hashimoto
オライリージャパン
2014-02-21





『実践 Vagrant』は、Vagrantの作者であるMitchell Hashimoto氏が自ら著した、Vagrantの解説書。

Vagrantとは何かというと、VirtualBoxを便利に使うためのコマンドラインツール――というのが最初の頃のVagrantだったと思うのだけど、今ではVirtualBoxだけでなくVMWareなどもいけるし、さらにはAmazon EC2のインスタンスをVagrantで操作することもできる。

要は、仮想マシンの設定と操作を便利に行えるツール、と考えると良いと思う。

仮想マシンを簡単に作っては破棄してが出来るようになって、何がうれしいのかというと、環境構築のコストが非常に小さくなること。VMの設定ファイルであるVagrantfileと、VMのセットアップを行うプロビジョニングツールのスクリプトさえ共有すれば、チームで全く同じ環境のVMを簡単に共有できるし、本番環境と同様に動作する開発環境を構築することもできる。

また、チームで開発する場合だけでなく、学習用の環境としても使いやすい。プレーンな状態のOSをさくっと立ち上げて、必要最低限のツールだけをインストールして学習用に使用し、仕事が終わったら破棄しておしまい、みたいなことが簡単にできる。

私の場合、最近は、学習用にはVagrantで作ったVMを使うことがほとんど。学習用の環境はしばらく使ったら捨てるのが前提なのだから、ローカルのOSに入れて環境を汚すより、使い捨ての環境を構築してしまったほうが良い。

共有フォルダやネットワーク関係の設定も、VirtualBoxのGUIで行うより、Vagrantfileで行ったほうがわかりやすい。


本書『実践Vagrant』には、私がVagrant関係で知りたいと思っていたことはほとんど載っていた(設定ファイル、プロビジョニング、ネットワーク、ボックスの作り方、プラグイン等)。ただ、一点、「ボックスはどこで入手すべきか」という情報だけは、得ることができなかった。

この疑問に関しては、最近リリースされたVagrant Cloudが一つの答えなのだろう。


『実践Vagrant』は『Vagrant: Up and Running』の翻訳書だが、原著の刊行から訳書の刊行までに古くなってしまった部分は、訳者が適切に補っている。それだけでなく、原著にはない解説も追加されており、今Vagrantの解説書を買うなら、これしかない、という決定版といえる。Vagrantのバージョンアップの早さを考えると、賞味期限は短い(1年程度?)と思われるため、早めに読むのが吉。